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採択者一覧は、あとから書き換えられている — 同じ回次の原本を3版そろえて分かったこと

公開 2026年9月7日 / 数字の測り直し 2026年9月7日

第13回の一覧は、945行 → 873行 → 835行と減った

事業再構築補助金の第13回公募について、事務局は採択案件一覧【全国統合版】というPDFを公表している。当サイトはこのPDFを、公表元が差し替えるたびに保存している。手元にある3つの版を、同じパーサに通して行数を数えるとこうなる。

原本の基準日第13回の行数
2026年6月15日時点945
2026年7月15日時点873
2026年8月14日時点835

110行が消えた。行が増えた版は1つも無い

同じ3つの版で、他の回次も数えた。第12回は1,752 → 1,752 → 1,751で1行減った。第11回は3版とも1,993行で増減0。第8回・第9回・第10回は6月15日時点の版と8月14日時点の版で行の集合が完全に一致し、消えた行も増えた行も0だった。

当サイトが保存している6回次ぶん・合計で、消えた行は111件

事業再構築補助金の採択案件一覧の行数を、回次ごとに公式発表の採択者数を100%の枠として示した図。第13回だけが945行・873行・835行と減っている。

読み取り漏れの可能性は潰してある。8月14日時点の版から本文テキストを全ページ取り出し、消えた110件の法人番号事業計画名を1件ずつ検索したところ、110件とも1文字も出てこなかった。行として取れなかったのではなく、そのPDFに書かれていない。

なぜ当サイトだけがこれを言えるのか

公式サイトにあるのは、いつでも最新版1つだけである。差し替えられた古い版はどこにも残らない。6月15日時点の一覧が945行だったことは、その時点で手元に落としていなければ、あとから確かめる方法が無い。

当サイトは、取得した原本をそのままの形で保存し、取得のたびに版を残すという作り方をしている(git-scraping と呼ばれる手法で、取得の履歴がそのままバージョン管理の履歴になる)。この記事が使う3つの版は、原本の1ページ目にある基準日で6月15日時点・7月15日時点・8月14日時点のもので、いずれもコミットとして残っている。行数は今日、その原本を取り出して数え直した。

原本の1ページ目には、こう書かれている。

事業再構築補助金 第13回公募 採択案件一覧【全国統合版】 ※事業計画名等については、一部補記している箇所がございます。 2026年8月14日時点

「時点」という語が、この一覧の性格をそのまま言っている。これは発表時の名簿ではなく、その日に有効な名簿である

そして、今からスクレイピングを始めても、6月15日時点の版は手に入らない。当サイトの設計文書は、この点をプロジェクトの前提として書いている。

今からスクレイピングしても得られない過去データの蓄積こそが、この事業の防御力

公式が発表した採択者数と、いまの一覧の行数は一致しない

事務局は、回次ごとに採択者数を発表している。第13回についてはこう書かれている。

厳正な審査を行った結果、1,101者を補助金交付候補者として採択いたしましたのでお知らせします。

いま公式サイトにある一覧(8月14日時点)の行数は835。1,101者に対して75.8%である

6回次すべてで同じ突合をした。

回次公式発表の採択者数最新の一覧の行数比率
第8回6,4565,39383.5%
第9回4,2593,55183.4%
第10回5,2054,23681.4%
第11回2,4371,99381.8%
第12回2,0311,75186.2%
第13回1,10183575.8%
合計21,48917,75982.6%

最新の一覧の行数は、公式に発表された採択者数の75.8〜86.2%にあたる。差は6回次で3,730件ある。

この3,730件を取りに行ける場所は、当サイトが探した範囲には無かった。同じ回次について事務局が出している他のファイル(ブロック別・産業別・事業計画の概要版)は、全国統合版と同じ表を切り口を変えて出したものだ。第13回では、どれも同じ835行の集合だった。

なお、当サイトが第13回の事例ページとして公開しているのは784件で、835行よりさらに少ない。公開系の出力から個人事業主を除いているためである(件数の意味について)。

消えた110件は、残った835件と何が違ったか

消えた110件の中身は、当サイトの手元に丸ごと残っている。残った835件と並べて比べた。

都道府県では差が出なかった。消えた110件は東京都23件・大阪府16件・愛知県10件で、残った835件の県別構成と比べてカイ二乗検定でp=0.60。特定の地域に固まってはいない。ブロック単位(関東・近畿など)でもp=0.06で、差があるとは言えない。

業種では差が出た。原本の「主たる業種(大分類)」を比べると、p<0.0001。

主たる業種(大分類)消えた110件残った835件
製造業10.9%39.6%
卸売業、小売業20.0%13.1%
建設業19.1%13.8%
不動産業、物品賃貸業8.2%2.9%
学術研究、専門・技術サービス業9.1%5.4%
情報通信業9.1%7.1%

当サイトが事業計画名から機械的に付けているテーマ分類でも、同じ向きの差が出る。残った835件で18.6%を占める「金属加工」は、消えた110件に1件も無い。「試作・開発」は19.3%に対して7.3%、「半導体・電子部品」は8.7%に対して0.9%、「ロボット・自動化」は4.3%に対して0件。逆に「DX・業務システム」は13.8%に対して22.7%、「医療・ヘルスケア」は5.5%に対して14.5%、「AI・データ活用」は5.6%に対して11.8%だった。

設備や加工の計画は一覧に残り続け、システム・サービス寄りの計画のほうが多く消えている。ただし、これは消えた側と残った側の構成の違いを述べただけで、なぜそうなったかは分からない。事務局は行を落とした理由を公表していない。なお事業計画名そのものの長さには差が無かった(中央値はどちらも30字)。

この記事では、消えた事業者の社名も法人番号も書かない。行が落ちた理由が公表されていない以上、名指しは当事者にとって不利益になりうるし、事実と違っていたときに取り返しがつかない。同じ理由から、一覧から行が消えたことをもって、その事業者に採択の取消・辞退・不正等があったと解釈しないでいただきたい件数の意味について)。当サイトが言えるのは、公表資料に記載が無くなった、という事実までである。

事業再構築だけで起きている

当サイトは12制度の公表資料を保存している。事務局が出したファイルそのものが444本ある(法人単位で追記していくAPIの応答などは別勘定)。そのうち、同じファイルが別の中身に差し替わった記録があるのは7本だけだった。

  • 事業再構築補助金の回次PDF 6本(第8回〜第13回)
  • 東京都中小企業振興公社の資料索引 1本

後者は218行から220行へ増えたもので(新しい採択者一覧のPDFが2本足された)、消えた行は0件だった。

行の減った記録があるのは、事業再構築補助金だけである

ただし、これは「他の制度は一覧を作り直していない」という証明ではない。当サイトが同じファイルを取りに行っていない期間があれば、その間の差し替えは見えない。たとえばものづくり補助金の取得は既定が最新3回次で、古い回次を毎回取り直してはいない。事業再構築だけは、どの回次でも行が消えうることが分かった時点で、毎回すべての回次を取り直す設定に変えてある

読者にとって、これが意味すること

第一に、採択は「補助金が出ること」ではない。事務局は交付申請のページにこう書いている。

応募申請では補助金の趣旨に沿った事業計画を策定しているかを評価・確認し、補助金交付候補者として採択されます。採択金額=補助金額ではありません。補助対象経費は交付審査にて審査をいたします。

採択されて付く肩書きは「補助金交付候補者」で、そのあとに交付申請と交付審査がある。同じページの「その他の申請」には次の様式が置かれていて、辞退は様式の用意された手続きである。

参考様式1 採択辞退届出書

さらに交付規程の第22条は「交付決定の取消し等」という条で、中小機構が交付決定を取り消せる場合を12号にわたって定めている。

中小機構は、第12条第1項第4号の補助事業の全部若しくは一部の中止若しくは廃止の申請があった場合又は次の各号のいずれかに該当する場合には、第9条第1項の交付の決定の全部若しくは一部を取り消し、又は変更することができる。

当サイトは、消えた111件がこのどれに当たるのかは書かない。公表されていないからである。書けるのは、制度としてそういう出口が複数あり、一覧の行が実際に減っている、ということまでだ。

第二に、採択事例を参考にするとき、その一覧は「いま生きている名簿」である。公表されている一覧を見て「この計画が通ったのか」と読むのは正しいが、そこにいるのは発表された全員ではない。第13回なら1,101者のうち835者ぶんである。「同業の採択事例がこれだけしか無い」と読むときは、その分母が発表時より小さくなっていることを勘定に入れたほうがいい。

第三に、これは採択率の話ではない。審査の厳しさとも、採択されやすさとも関係が無い。採択されたあとに何が起きるかの話である。

この記事の限界

  • この数字は2026年9月7日に測ったものだ。当サイトは交付情報を毎日足しているので、同じSQLでも日を置けば数字は動く。サイトの他のページはビルドのたびに測り直しているため、この記事の数字とわずかにずれることがある。

理由は書いていない。行が消えた理由は、辞退なのか、取消なのか、事務局の側の整理なのか、公表されていない。当サイトはそれを推測しない。

版と版の間は見えない。当サイトが持っているのは基準日が1か月ずつ離れた版だけで、その間に何が起きたかは分からない。ある月に消えて次の版までに戻った行があったとしても、当サイトの数え方では見えない。

最初の版より前は空白である。第13回の応募締切は令和7年3月26日と公式に書かれている。当サイトが保存している最も古い版は2026年6月15日時点のもので、採択が発表されてからそこまでの間に一覧が何度作り直されたかは、当サイトには無い。したがって111件は、実際に消えた件数の下限であって、総数ではない

古い回次を取りに行っていなかった期間がある。取得の既定が「最新3回次」だった2026年7月14日から8月28日までのあいだ、第8回から第10回は最初に取った6月15日時点の版のまま凍っていた。その期間に公表元がこの3回次の版を差し替えていれば、当サイトはその版を持っていない。いまは毎回すべての回次を取り直す設定に変えてある。


この記事の数字は、当サイトが保存している原本と、公表元のページから取った。数字に疑問があればお問い合わせからご連絡いただきたい。掲載している事例の訂正・削除のご希望も同じ窓口で受け付けている(公表元が資料を差し替えた場合について)。

制度の内容・締切・要件は変わります。申請の前に、必ず自分が出す回次の資料を公式サイトで確認してください。

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