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省エネ補助金は、業種でいくら違うか — SII交付決定11,404件の実測

公開 2026年9月7日 / 数字の測り直し 2026年9月7日

印刷は3,790万円、電子部品は312万円。同じ制度で12倍ひらく

省エネ補助金(SII省エネ補助金)の交付決定額が判明している事例は、当サイトに 11,404件 ある。全体の中央値は546万円、真ん中の半数は204万円〜1,394万円に入る。

これを業種で割ると、こうなる。

業種件数中央値中央50%最大
印刷3553,790万円1,387万〜7,800万円6.6億円
金属加工2,6651,157万円590万〜2,667万円40億円
プラスチック加工606772万円450万〜1,365万円1.1億円
化学工業300504万円206万〜1,000万円7.5億円
電子部品・半導体51312万円164万〜673万円6,460万円
(全体)11,404546万円204万〜1,394万円40億円

業種別の交付決定額。帯は中央50%、縦線は中央値。

上と下で 12倍 ひらく。印刷の事業者が全体の546万円を見当にすると7分の1で見積もることになり、電子部品の事業者が同じ数字を見れば2倍近く多く見積もることになる。

この5業種を選んだ理由は単純で、当サイトの検索流入で「省エネ補助金+業種名」の形で実際に打たれているクエリの上位がこの5つだからだ。答える面が無かったので、この記事を書いている。

SIIは業種を公表していない。公表しているのは「設備区分」のほう

先に、業種をどう決めたかを書く。SIIの交付決定案件一覧に業種の欄は無い。工場・事業場型の列は「事業の名称/事業者名/事業実施場所住所/事業の概要/補助金交付決定額」、設備単位型・指定設備導入事業はそこに 16の設備区分の列(高効率空調・高性能ボイラ・工作機械・印刷機械・プラスチック加工機械など)が付き、どの区分で通ったかが「○」で公表されている。11,404件のうち10,280件がこの列を持つ。推定ではなく公表資料の欄そのものだ。

当サイトが既に持っているテーマタグも、ここでは業種の代わりにならない。11,404件のうち11,282件が「省エネ・環境」タグに入り、金属加工タグは384件、半導体・電子部品タグは57件しか付いていない。事業計画名が「◯◯工場の省エネルギー化事業」という定型で、業種の語が出てこないからだ。

そこで業種は、2本の鍵のどちらかに当たればという形で機械的に当てた。①事業者名の語(「印刷」「製作所」「鉄工」「化学」「樹脂」など。共同申請者と法人格の語を除いた第一者の商号だけを見る)、②公表の設備区分(印刷機械なら印刷、工作機械・プレス機械・ダイカストマシンなら金属加工、プラスチック加工機械ならプラスチック加工)。

2本は独立しているので、片方でもう片方を検算できる。社名に「印刷」を含む147件のうち112件(76%)に印刷機械の○が付いていた。「プラスチック」は80%、「鋼」は77%、「鉄工」は75%、「製作所」は67%。裏取り率が低い語(「紙器」7%)は規則から外した。規則の全文と語ごとの裏取り率は当サイトの集計資料に記録してある。

5業種で当たるのは3,766件(33.0%)。残り7,638件は社名にも設備区分にも業種の語が出てこない事業者(中央値360万円)で、その大半は高効率空調の更新だ。

額を分けているのは、業種よりまず設備区分

業種で12倍ひらいた理由は、公表されている設備区分を見ると素直に説明がつく。

設備区分別の交付決定額の中央値。

設備区分件数中央値
印刷機械2813,687万円
プレス機械3022,059万円
工作機械1,9211,300万円
ダイカストマシン481,147万円
プラスチック加工機械586787万円
低炭素工業炉113666万円
高性能ボイラ743327万円
高効率空調4,755326万円
変圧器258260万円
冷凍冷蔵設備564238万円
産業用モータ522161万円
制御機能付きLED照明器具397148万円

印刷機械と制御機能付きLED照明器具では25倍違う。件数が最も多いのは高効率空調の4,755件で、その中央値326万円が「省エネ補助金の相場」として一番多く発生している額になる。

つまり業種別の順位は、その業種が申請する設備の単価の順位にほぼ重なっている。印刷が上にいるのは印刷機械が高いからで、電子部品が下にいるのは、その51件のうち26件が高効率空調だからだ。

検索されている5業種を1つずつ

印刷(印刷工場・印刷業)

355件・中央値3,790万円・中央50%は1,387万〜7,800万円。この5業種のなかで最も額が大きい。内訳は印刷機械281件、高効率空調38件。県別は大阪府46件・埼玉県39件・愛知県28件・東京都27件。

額の帯を散らして並べると、こうなる(すべて公表資料のとおり)。

  • 687万円 株式会社トーホー/三井住友ファイナンス&リース(愛知県)「中部事業所の省エネルギー化事業」印刷機械
  • 3,790万円 株式会社隆文社(愛知県)「株式会社隆文社 本社工場の省エネルギー化事業」印刷機械
  • 1.1億円 オリカ株式会社(富山県)「射水工場の省エネルギー化事業」印刷機械+制御機能付きLED照明器具

最大は竹田印刷株式会社/三菱HCキャピタル株式会社の6.6億円(愛知県「竹田印刷株式会社の先進型設備による省エネルギー事業」)。計画名は「本社工場の省エネルギー化事業」という定型が大半で、まれに設備を書いたものがある(秋田協同印刷「本社工場のオーダーメイド印刷機導入事業」8,900万円)。

金属加工

2,665件・中央値1,157万円・中央50%は590万〜2,667万円。5業種で最も件数が多く、SII省エネ全体の23.4%を占める。設備区分は工作機械1,921件・プレス機械302件・ダイカストマシン48件。県は愛知県293件・大阪府250件・埼玉県153件・静岡県145件・兵庫県136件の順で、工作機械の集まる地域とそのまま重なる。

最大は40億円のJFE条鋼株式会社/オリックス株式会社(岡山県)「JFE条鋼株式会社水島製造所の省エネルギー化事業」で、これはSII省エネ全体の最大額でもある。ただしこれは工場・事業場型の案件で、金属加工2,665件のうち工場・事業場型は57件しかない。設備区分の列を持つ2,601件だけで見た中央値は1,130万円で、全体(1,157万円)とほとんど変わらない。この業種の水準は、40億円の1件ではなく2,600件の側が作っている。

プラスチック加工

606件・中央値772万円・中央50%は450万〜1,365万円。586件がプラスチック加工機械の○で、5業種のなかで最も設備区分がそろっている。工場・事業場型は0件で、全件が設備単位型(434件)か指定設備導入事業(172件)だ。県は愛知県136件・群馬県48件・静岡県45件・岐阜県37件・三重県31件。298万円の株式会社アンセイ(三重県「三重工場の省エネルギー化事業」)から、最大は小島プレス工業株式会社(愛知県「高岡工場の省エネルギー化事業」)の1.1億円まで。

化学工業

300件・中央値504万円・中央50%は206万〜1,000万円。ここは分類が一番あやしい。300件の設備区分の内訳で最多はプラスチック加工機械の107件で、高性能ボイラ60件、高効率空調54件と続く。「◯◯化成」「◯◯化工」という社名の会社は、実際にはプラスチックの成形をしていることが多い。社名だけでは化学工業とプラスチック加工を切り分けられない(社名に「化成」を含む110件のうち56件、「化工」を含む38件のうち19件にプラスチック加工機械の○が付く)。この記事では両方の業種に重複して数えている

最大は日宝化学株式会社/日本ファシリティ・ソリューション株式会社の7.5億円(千葉県「日宝化学株式会社千町工場におけるガスエンジンCGSへの更新による省エネルギー事業」)。

電子部品・半導体

51件しかない。中央値312万円で、5業種で最も少なく最も低い。内訳は高効率空調26件、産業用モータ8件、工作機械6件。16の設備区分に半導体製造装置にあたるものが無いので、この業種の事業者が申請しているのは工場の空調・モータ・変圧器といった付帯設備になる。最小は61万円の横浜電子工業株式会社(秋田県「本社工場の省エネルギー化事業」高効率空調)。最大はタワーパートナーズセミコンダクター株式会社/北陸電力ビズ・エナジーソリューション株式会社(富山県「砺波地区の省エネルギー化事業」)の6,460万円だ。

「省エネ補助金 半導体」で調べている人に対する、この制度からの正直な答えは「事例そのものが少ない」になる

もう一本の軸は「事業区分」。同じ業種でも桁が変わる

SII省エネ補助金は1つの制度ではなく、複数の事業区分の束になっている。区分が違うと額の桁が違う

事業区分件数中央値中央50%最大
工場・事業場型1,0793,850万円1,202万〜1.3億円40億円
設備単位型7,522521万円195万〜1,220万円2.3億円
指定設備導入事業2,779400万円169万〜876万円1億円

前者は工場全体のエネルギー計画に対して出るもの、後者は対象設備を入れ替えるもので、中央値が7倍違う。印刷はこの差が最も強く出る。印刷355件のうち工場・事業場型は34件で、その中央値は2.1億円。残り321件は3,105万円。同じ「印刷業の省エネ補助金」でも、どちらの区分に出したかで7倍動く。

その工場・事業場型の1,079件には、SIIが公表している「事業の概要」の一文が付いている。この文の語で取り組みを分けると、額の並びが出る(上から先取りの排他分類)。

取り組みの型件数中央値
自家発電・熱電併給(コージェネ・ガスタービン)239.4億円
排熱・熱回収251.3億円
燃料転換・非化石化(バイオマス・都市ガス・電化)831.0億円
設備更新(高効率化)8223,750万円
制御・運用改善(EMS・見える化)87485万円

エネルギーの作り方そのものを変える案件が上に、使い方を制御する案件が下に並ぶ。最大の40億円は「既存の石炭ボイラ発電設備から、木質のバイオマスボイラ発電設備への更新を行う」(株式会社日本海水・香川県)で、EMS中心の87件は中央値485万円に集まる。

リース会社との連名は、業種の中で見ると差が消える

SII省エネの「事業者名」欄は共同申請者を「/」で並べて公表している。11,404件のうち連名は2,047件(17.9%)で、連名の中央値は813万円、単独名義は495万円。連名のほうが1.6倍大きい。

ところが業種の中で見ると、この差はほとんど残らない。

業種連名の割合連名の中央値単独の中央値
金属加工35.8%1,100万円1,194万円
プラスチック加工29.4%739万円793万円
印刷12.7%4,085万円3,790万円
化学工業20.7%800万円480万円

金属加工とプラスチック加工では、連名のほうがむしろ小さい。全体で見えていた「連名は大きい」は、連名率が高い業種(金属加工35.8%)の額がもともと高いことの反映が大きい。リースを使えば額が上がる、という読み方はこの数字からは出てこない

年度の水準は上下していて、単調な傾向は無い

年度件数中央値うち設備単位型
令和4年度2,784400万円(無し・全件が指定設備導入事業)
令和5年度2,699617万円552万円(2,472件)
令和6年度3,925545万円450万円(3,267件)
令和7年度1,996717万円650万円(1,783件)

全体の中央値は400万→617万→545万→717万と動くが、この動きの大半は年度ごとに公表された事業区分の構成が違うことによる。令和4年度は指定設備導入事業だけで、令和5年度から工場・事業場型が加わる。区分をそろえた設備単位型だけで見れば552万→450万→650万で、上がり続けても下がり続けてもいない。「今年は額が大きい」と読める材料はここには無い

なお制度の現在の名称は「令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金」で、区分に「(設備単位型)」「(工場・事業場型)」が付く。当サイトの表記は「SII省エネ補助金」で通している。

自分の水準を知るための3ステップ

  1. 区分を決める。工場全体の計画なら工場・事業場型(中央値3,850万円)、設備の入れ替えなら設備単位型(521万円)。ここで桁が決まる
  2. 設備区分で見当を付ける。上の16区分の表で、自社が入れる設備の行を見る。業種名より、設備区分のほうが額に近い
  3. 事例を読む/seido/sho-ene/ に制度の全事例が、/kofugaku/ に交付額の大きい順の一覧がある。狙う額の帯のページを開けば、その額で通った事業計画名がまとめて読める

当サイトには現在、業種別のページが無い。制度・都道府県・テーマ(25分類)・市区町村・支援機関の軸はあるが、「省エネ補助金×印刷業」で1枚になっている面は無い。この記事はその穴を実測で埋めたもので、面としての整備は別に検討する。

この数字が届かない範囲

  • この数字は2026年9月7日に測ったものだ。当サイトは交付情報を毎日足しているので、同じSQLでも日を置けば数字は動く。サイトの他のページはビルドのたびに測り直しているため、この記事の数字とわずかにずれることがある。

  • 業種は機械分類で、公表された事実ではない。SIIは業種を公表していない。この記事の業種は、事業者名の語と公表の設備区分から当サイトが当てたものだ。裏取り率は語によって67%〜80%で、100%ではない。分類規則の全文は当サイトの集計資料に記録してある

  • 5業種で当たるのは33.0%。業種別の中央値は「その業種の全事例」ではなく「その業種と判定できた事例」の中央値になる

  • 採択率ではない。ここにある数字はすべて交付決定した案件だけのもので、落ちた申請は入っていない。SIIの交付決定ページに応募件数・採択件数・採択率の記載は無く(令和7年度補正の設備単位型・工場・事業場型のいずれも確認した)、当サイトは分母を持っていない。したがって当サイトでは採択率を計算できない

  • 交付決定額であって、確定額ではない。事業に着手する前の額で、事業完了後に確定する額とは別のものだ。当サイトは確定額を持っていない

  • 年度版で様式が違う。設備区分の列は年度によって見出しが崩れており(同じ列が「制御機能付きLED照明器具」「LE制照明器具D御機能付き」と読み取られる回次がある)、同じ区分として束ねている。束ね方も同じ集計資料に書いてある

  • 個人事業主は数に入っていない。公開する集計・一覧・エクスポートのすべてから外してある。この記事の数字は法人・団体だけのものだ

  • 1つの制度の話でしかない。事業計画名と交付決定額を1枚の資料で同時に公表しているのはこの制度だけだ。ものづくり補助金・事業再構築補助金などの採択者一覧に金額の列は無い(制度をまたいだ額の話は別記事「補助金は、結局いくら出るのか」にある)


この記事の数字はすべて、当サイトが収録する公表資料から自分で集計したものです。集計に使ったSQL・分類規則・語ごとの裏取り率は当サイトで保管しており、数字の根拠のお問い合わせにはこれをもとにお答えします。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからご連絡ください。

制度の内容・締切・要件は変わります。申請の前に、必ず自分が出す回次の資料を公式サイトで確認してください。

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