記事

認定支援機関の「実績」は何を意味し、何を意味しないか — 1,193機関・29,278件の実測

公開 2026年9月7日 / 数字の測り直し 2026年9月7日

認定支援機関とは何か

補助金の申請では、認定経営革新等支援機関の確認書を求められる制度がある。中小企業基盤整備機構が新事業進出補助金の申請案内に置いている定義は、こう書かれている。

認定経営革新等支援機関(認定支援機関)とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関(税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関等)です。

同じページは、その関わり方の限度も書いている。

申請者は事業計画の作成、実行及び成果目標の達成に責任を持って取り組んでいただく必要があります。必要に応じて、認定支援機関を含む外部支援者等からアドバイスをもらい、事業計画をブラッシュアップすることは差し支えございませんが、必ず申請者自身で事業計画を作成してください。

計画を書くのは事業者で、機関はその外側にいる。以下の数字は、その前提の上で読んでほしい。

「実績」という語の中身を先に決める

当サイトは /shienkikan/1,193機関・29,278件 を収録している。ここでいう1機関あたりの「件数」の定義はひとつだけだ。

公表された採択者一覧の「認定支援機関名」の欄に、その機関の名前が載っている行の数。それ以上でもそれ以下でもない。

だから、これは採択率ではない。採択率を出すには分母、つまりその機関が支援した申請の総数が要る。申請の総数はどの制度も公表していない。当サイトが持っているのは通った側の行だけなので、分母は作れない。

機関の優劣を示すものでもない。件数は当サイトの収録範囲(制度・回次)に丸ごと左右されるし、後述するとおり、そもそも記載欄が空の行が4割ある。

そのうえで、言えることは1つある。ある県のある業種で通った計画に、どの機関の名前が多く載っているか。これは公表資料の記載を数えただけの事実で、推定を1つも含まない。「優劣ではないが、実績である」というのは、この意味においてだ。

支援機関名が載っているのは、そもそも3制度だけ

当サイトが収録している公開事例は 223,564件。このうち認定支援機関名の欄そのものを持つ制度は、12制度のうち3制度だけだ。ものづくり補助金・事業再構築補助金・新事業進出補助金の 65,661件(全体の29.4%) になる。IT導入補助金の112,565件、小規模事業者持続化補助金の15,564件、SII省エネ補助金の11,404件には、この欄が無い。

欄を持つ65,661件の内訳はこうなる。

状態件数割合
法人・団体名が載っている30,70546.8%
個人名だけが載っている8,46212.9%
欄が空26,49440.3%

欄があっても4割は空である。個人で認定を受けている診断士・税理士の氏名しか載っていない12.9%は、氏名の公開を避けて集計から外してある(後述)。残った30,705件から3件未満の機関を除いたものが、1,193機関・29,278件になる。

制度別に見るとこうだ。

制度公開事例機関名あり個人名のみ空欄
ものづくり補助金41,42045.9%12.1%42.0%
事業再構築補助金21,95550.1%14.5%35.4%
新事業進出補助金2,28630.4%11.9%57.7%

回次をまたぐと、見え方が変わる。事業再構築補助金の採択者一覧で認定支援機関名の欄が空の行は、第8回から第11回まで0.0%〜0.2%だった。それが第12回で61.7%、第13回で57.8%になる(記事③「第何次で何が通ったか」§1と同じ数字で、原本のPDFを直接開いても同じ数になる)。機関名が載っている公開事例の割合で言えば、第8回79.8%・第11回76.1%に対して、第12回26.8%・第13回27.2%だ

ものづくり補助金は逆向きに動いてから戻る。機関名が載っている割合は第1次40.6%から第16次の54.3%まで上がり、第19次49.7%、第23次では30.0%まで落ちる。

回次をまたいで件数を足すと、この記載率の差がそのまま件数の差になる。第12回以降の事例が少ない機関は、支援していないのではなく、書かれていない可能性がある。

機関の種別は、名前から機械的に分けた

1,193機関を、機関名の文字列だけから8つに分けた。「銀行」「信用金庫」を含むものを金融機関、「商工会議所」を含むものを商工会議所、というように上から順に当てていく。認定の区分ではなく、この記事のための分類である。

認定支援機関1,193機関の種別ごとの機関数と収録件数。金融機関317機関で12,012件、コンサルティング会社ほか445機関で11,565件。

種別機関数件数件数の割合1機関あたり
金融機関31712,01241.0%37.9
コンサルティング会社ほか44511,56539.5%26.0
商工会・中央会532,3087.9%43.5
商工会議所1811,4264.9%7.9
税理士・会計1319873.4%7.5
公的支援機関・大学476322.2%13.4
その他の士業132861.0%22.0
中小企業診断士6620.2%10.3

金融機関とコンサルティング会社の2つで、件数の80.5%を占める。機関数では商工会議所が181機関で3番目に多い。ただし1機関あたりは7.9件で、金融機関の37.9件・商工会連合会等の43.5件とは桁が違う。

なお税理士法人が131機関・987件しかないのは、税理士が支援に関わっていないという意味ではない。個人名でしか載らない8,462件が、ここから丸ごと抜けている

都道府県ごとに、誰の名前が多く載っているか

47都道府県それぞれで、支援機関つき事例に最も多く名前が載っている機関を出した。

47都道府県それぞれで最も多く名前が載っている認定支援機関と、その県内シェア。長野県の株式会社八十二銀行の24.6%が最も高い。

1位が金融機関なのは29県、商工会・中央会が15県、公的支援機関が2県、コンサルティング会社が1県。県内での集中の度合いは大きく違う。長野県は株式会社八十二銀行の192件が県内の24.6%を占めるが、東京都の1位は合同会社G&Nの122件で3.4%しかない。県内の支援機関つき事例が3,590件と多く、機関の数も多いためだ。

地域とテーマまで絞ると、もっと細かい顔が出る。

株式会社名古屋銀行の名前は採択者一覧に 329件ある。うち 愛知県が309件、制度別ではものづくり補助金204件・事業再構築補助金125件。テーマ別では金属加工が105件で最も多く、そのうち交付決定額まで判明している27件の中央値は3,407万円だ。愛知県×金属加工に絞ると、当サイトの公開事例1,376件のうち101件に名前が載っている。

同じ切り方を静岡県×金属加工でやると、上位は浜松磐田信用金庫の60件と株式会社静岡銀行の53件(交付額つき15件・中央値4,000万円)になる。大阪府×飲食では大阪信用金庫の16件と株式会社池田泉州銀行の14件(交付額つき11件・中央値1,131万円)。県が変われば名前が変わる。これが「その地域のその業種で、通った計画に多く関わっているのは誰か」に対する、公表資料からの答えだ。

繰り返すが、これは通りやすさの話ではない。その機関に頼めば通る、とは1文字も書いていない

件数の多い機関と、金額の大きい機関は違う

件数と交付決定額は、別々に動く。交付額まで判明している事例が30件以上ある66機関で中央値の順位を作ると、件数上位20のうち、中央値でも20位以内に入るのは8機関だけだった。

機関件数交付額つき中央値中央値の順位
件数1位株式会社ゼロプラス664752,000万円14位
件数2位株式会社エフアンドエム618951,777万円48位
件数3位株式会社フラッグシップ経営4821861,500万円54位
件数8位株式会社静岡銀行251793,537万円4位
件数10位株式会社コムラッドファームジャパン226603,000万円8位

順位は同額を同じ順位として数えている。中央値がちょうど2,000万円の機関は66のうち28あり、14位はその28機関すべての順位だ。1,500万円ちょうどにも5機関いる。順位そのものより、額の帯を見たほうがいい。

分布の形も割れている。この66機関の事例で3,000万円以上が占める割合を見る。株式会社三井住友銀行が78.1%(母数32件)、株式会社商工組合中央金庫が75.5%(53件)、株式会社三菱UFJ銀行が68.4%(38件)。逆に1,000万円未満が占める割合では、株式会社SoLaboが73.4%(94件)、東京商工会議所が72.7%(44件)、ゼロス税理士法人が72.4%(76件)になる。参考までに、支援機関つき・交付額つきの8,921件全体では3,000万円以上が23.5%、1,000万円未満が24.6%で、中央値は1,764万円だ。

大型の案件に集まる機関と、小口を数多く扱う機関がいる。どちらが良いという話ではない。自分の事業の規模に近い帯の事例を、どの機関が多く持っているかを見る材料になる、というだけだ。

使い方と、いまできないこと

  1. 地域から入る/shienkikan/ は収録件数の多い順に1,193機関を並べてある。上の図で自分の県の名前を見つけたら、その機関のページを開く。
  2. 機関のページで制度とテーマを見る。各ページには制度別・都道府県別の内訳と、事業計画名の一覧が出ている。交付額が突き合っている機関では、テーマ別の中央値まで出る。
  3. 同じ切り口で地域側からも見る/chiiki/{都道府県}/{テーマ}/ にはその県・そのテーマの事例が並ぶ。上で見た機関の名前がそこに何度出てくるかは、いまは目視になる。

3つ目が目視になるのは、当サイトの事例ページに認定支援機関名を出していないからだ。機関のページから事例へは行けるが、事例のページから機関へは戻れない。データとしては1件ずつ持っているのに、導線が片方向しかない。これは当サイトの作りの問題で、公表資料の問題ではない。

この数字が届かない範囲

  • この数字は2026年9月7日に測ったものだ。当サイトは交付情報を毎日足しているので、同じSQLでも日を置けば数字は動く。サイトの他のページはビルドのたびに測り直しているため、この記事の数字とわずかにずれることがある。

  • 採択率ではない。分母(その機関が支援した申請の総数)は公表されていない。この記事のどの数字も、通りやすさを測っていない。

  • 記載率が回次で大きく変わる。事業再構築補助金は第12回で61.7%、第13回で57.8%の行が空欄。回次をまたいで足した件数は、この差を含んでいる。

  • 個人名は集計から外している。認定支援機関名の欄に個人名しか載っていない事例が 8,462件、名称の種類にして 2,309種ある。氏名を公開すれば開示・訂正・利用停止の請求へ氏名の数だけ応じることになり、かつ件数の少ない個人を並べて数えるのは当人に不利益な比較になる。当サイトはこれを一件も表に出さない。そのぶん、税理士・診断士の関与は実際より小さく見えている。

  • 3件未満の機関は載せていない。集計上の名称2,295種のうち、事例が3件未満の 1,102機関・1,432件はページを作っていない。

  • 表記ゆれが残っている。空白や大小文字だけの差は束ねてあり(26の名称が2つ以上の書き方で載っている)、「株式会社シャイン総研」と「株式会社 シャイン総研」は同じ1機関として数えている。一方で法人格の表記が違うものは別の機関のままで、実測 16組ある。最大は「合同会社G&N」156件と「株式会社G&N」171件で、いま別々のページになっている。

  • これは生存リストだ。公表資料は差し替えられる。当サイトが把握している取消は111件で、その事例に載っていた機関名も一緒に消えている(件数の意味について)。消えた行と支援機関の関係は、この記事では扱わない。行が消えた理由は公表されておらず、理由が分からないまま機関ごとの傾向を出せば、その理由を機関に帰属させる読み方を招く。

  • 個人事業主は数に入っていない。公開する集計・一覧・エクスポートのすべてから外してある。この記事の数字は法人・団体だけのものだ。

  • 当サイトは各支援機関と提携・推奨の関係にない。正確な支援実績は各機関へ直接確認してほしい。


この記事の数字はすべて、当サイトが収録する公表資料から自分で集計したものです。集計に使ったSQLと出力は当サイトで保管しており、数字の根拠のお問い合わせにはこれをもとにお答えします。誤り、掲載内容の訂正・掲載停止のご依頼はお問い合わせからご連絡ください。

制度の内容・締切・要件は変わります。申請の前に、必ず自分が出す回次の資料を公式サイトで確認してください。

← 記事の一覧へ